本履歴

購入した古本の履歴と時々プログラミング

パタン・ランゲージ

C・アレグザンダーさん*1のパタンランゲージといえば、デザインパターンで有名ですかね? 街づくりや建築のパターンのガイドブックです。その中に、素敵なお話があったので紹介しましょう。ちなみに、店先学校パターンからの引用です。

学校の始業日に、私たちはロサンゼルスの都市の公園の1つで昼食をした。昼食後、生徒全員を集めて、「木の名前あてをしよう」というと、かれらは口ぐちに不平をならした。そこで私がいった。「何だ、君たちは植物と一緒に生活しているのとちがうか。名前ぐらい知らなきゃおかしいぞ。僕たちに上にあるこの木の名前がわかるかい。」

生徒たちは上を見上げ、いっせいに、「プラタナス」と答えた。そこで、「どんな種類のプラタナスかな」と聞くと、誰も知らなかった。私は『北米の樹木』という本を取り出し、「調べてみよう」といった。本に出ているプラタナスはたった3種類で、しかも西海岸にはカリフォルニアプラタナスというやつだけだった。これまでと思ったが、私はさらにこだわった。「本のとおりかどうか、ここにある木を確かめたほうがよい。」そこで「葉は6から8インチ」とテキストを読み上げた。私は布製の巻尺を取り出し、ジェフに手渡しながら「葉っぱを測ってごらん」といった。ジェフは葉が本当に6から8インチであることを確認した。

私はさらに先を続け、「成木の高さは30から5フィート。これをどうやって確かめようか」とたずねた。かんかんがくがくの議論の末に達した結果は、私が木と並んで立ち、生徒たちはできるだけ遠くに離れ、木がぼくの何倍に相当するか見極めようというものであった。簡単な掛け算で木の大体の高さが分かった。ここまでくると、もう皆が夢中であった。そこで「別の測り方はないかな」と皆にたずねた。7年生のエリックは幾何学を多少は知っており、3角法による高さの測定法を私たちに教えてくれた。

私は全員の注目をあびながら気をよくし、さらに本を読み続けた。段落の終りのほうで「直径は1から3フィート」という決定的記述に行き当たった。そこで私は巻尺を手渡しながら「あそこの木の直径を測ってごらん」と指示した。生徒たちは木のほうに向かったが、そばに行ってはじめて、木の直径を測定するには切り倒す以外にないことに気付いた。だが、私がどうしても木の直径を知りたいと言い張ると、2人の生徒が木のそばで巻尺を引っ張り、目盛りの「端」をそれぞれ目測し、18インチという測定値を出した。

私は「それは正確な答え、それとも大体の数字なの」とたずねた。生徒たちはそれが単なる推測にすぎないことを認めたので、私は「何か別の方法は」とたずねた。

すぐにダニエルが答えた。「だって木の周りなら測れるから、地面にそれと同じ円を書いて、その直径を測ればいいじゃない。」私はすっかり感心し、「すぐにやってごらん」といった。同時に残りの生徒たちに、「もっと別の測り方はないかしら」とたずねた。

視覚的な人間と目されるエリックが、きっと木には2辺があると思ったのだろう。「ええと、幹の周りを測って、それを2で割れば」といい出した。私は失敗からも、成功からと同じくらい学べると考えているので、「分かった、やってごらん」といった。その間ダニエルは、地面に描いた円の直径を測っていたが、ややゆがんだ円周上の2点を選んで「18インチ」という前と同じ数値にたどり着いた。そこでエリックに巻尺を与えると、かれは木の周囲を測り、得られた60インチを2で割り、30インチという直径を算出した。当然のことながら、ちょっとがっかりした様子を見せたので、「そう、君の考えはいい線いってると思うけど、割る数が違うのかも。2よりもいい数があるんじゃない」といってやった。

すぐにマイケルが、「3で割ればよいのさ」といって、ちょっと考えてから「それから2を引く」と付け加えた。
「すごい。君たちは公式を見つけたんだぞ。あの木でためしてごらん。」私はそういって、直径わずか6インチほどの木を指差した。生徒たちはそこに行き、円周を測り、それを3で割り2を引いて、さらに地面に描いた円で測った数字と比較した。結果は思わしくなく、私はもっと別の木で試すようにいった。生徒たちはさらに3本の木を測定して戻ってきた。
「どうだった。」
「はい。3で割るのはよいけど、2を引くのはまずいみたい」とマークが答えた。
「3で割るとどんな具合なの」と私が聞くと、マイケルが「ちょっと少ないんだ」と答えた。
「どれぐらいならいいの」
「3 1/2ぐらい」とダニエル。
「ちがうよ、3 1/8に近いと思う」とマイケルがいった。

その時点で、5歳から13歳のこの5人の子供たちは、\piの発見一歩手前にあったのだが、私は自分の気持を抑えきれなくなっていた。1/8を少数に換算することを教え、授業をさらに進めることができたのに、私はあまりにも興奮していたのだ。

「さてみんな」と私はいった。「君たちに秘密を教えてあげよう。ある魔法の数があって、すごく特別な数字なので自分の名前をもっているんだ。\piというんだ。何が魔法かというと、大小に関係なくどんな円でもいい、その数を知っていれば、円周から直径でも、直径から円周でもすぐに出せるんだ。さあ、それはこうやって・・・」

私の説明がすむと、皆で公園を歩き回り、\piを使って直径から円周を出したり、円周から直径を出したりした。後日、計算尺の使い方を教えた時も、\piの位置を示し、一連の「木」の問題を出題した。その後も、\piの概念があいまいな抽象数学のなかに消滅しないように、電柱や電灯の柱ですべてを復習させた。私自身も、ハイスクールでの数学の授業に恵まれなかったから、大学に入るまで\piを本当に理解できなかったと思う。だが、少なくともこの5人の子供たちにとっては、\piは現実であり、木や電柱のなかに「生きている」のだ。 

これぞ教育の原点!ってカンジですよね。ぼくも数学の先生になりたかったなー。

*1:この人数学の修士号持ってますね。すごい!